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繰り返された水俣病の構図(毎日新聞)を読んで

本日(2011・05・03)の福岡賢正記者による毎日新聞オピニオンには基本的に賛成であるが、自分のことを棚にあげた残念なオピニオンでもある。 論旨は以下の通り。 TEPCOの福島原発事故は、14年前に石橋克彦(神戸大学名誉教授)が原発震災と名付けて論文で警告されていた。これを班目春樹原子力安全委員長と4月30日に内閣参与を辞任した小佐古敏荘東大大学院教授(内閣参与)は当時、あらゆる懸念を打ち消し、放射能外部放射は全く起こらないと批判した。これが水俣病の轍を踏んだ産官学癒着の構図と指摘する。水俣病だけで無く、アスベスト、長良川河口堰も例示している。そして、津波前に地震で原子炉圧力容器配管破損とそれに伴い冷却剤喪失の可能性を指摘し、産業界などから「津波対策を万全にすれば日本の原発は安全」の声を懸念する。そのうえで、国民一人一人が自らの胸に問い、答えを出し、そして行動を起こすことを促している。 ま、わからなくもないが、国民が知り様がないことも多いではないか。14年前の石橋教授の指摘では報道がどれだけされたのだろうか。毎日新聞はどう報道したのか。広告主を攻撃できない構造的問題を民放と大手新聞は抱えているのではないか。 そこに蓋をして自分で考えろというのは自分のミッションを放棄し、問題のすり替えに読めてしまうのだ。新聞自身の限界を合わせて読者に開示してはじめて意味を持つオピニオンになるだろう。残念なオピニオンである。

トキ野生復帰の意義(毎日新聞)

今日(2011・05・02)の毎日新聞の地方発オピニオンは考えさせられる。 環境庁佐渡自然保護官の長田啓さんが書いているのだがその骨子は、 一度自然から消えたトキが放たれた。佐渡は人口減と高齢化(36.2%)と日本の課題を先取りした島。 佐渡では08年のトキ放鳥を契機に生物多様性の島作りを推進。 米作りでは認定制度で生きものとの共生安全安心の付加でブランド化。両生類魚類などがすみやすい水田管理、減農薬、生き物調査の義務付けなどが要件。 都市部消費者と生産者を草取りツアーが続けられ、企業からの寄付はビオトープの整備に活用。 野生のトキの観光資源としての活用ルールの制定が検討課題。 これからはトキに限らず地域の自然の固有性や多様性を地域が認識し活かすことが重要。自然歴史文化に根ざした個性豊かな地域は住むものにとっても来訪者にとっても魅力的なものである。 放鳥トキの成功が自然環境を基盤とした誇りある地域づくりの道標になれるように行政も市民も一緒になって進んで行きたい。 生物多様性保全とはヒトが自然や地球に生かせてもらえる必要要件だと思うが、鳥は生物ピラミッドの上位なだけに指標の一つになりうるのだろう。課題先取りの日本が世界に先駆けて佐渡の取り組みのような解を提案・実践して行くことこそ求められている。鳥を通した生物多様性の保全・増進は人々の暮らし方に繋がる広がりのある取り組みになると感じる。

原子力発電事故の基礎知識(9) ー人への放射線の影響ー

正しく恐れるために正しく知識を身につけなければならない. 低量放射線なら問題無いとする一般向けの本を読んだ[1]. 著者の近藤宗平さんは,コトバンク[2]によると 近藤宗平 こんどう-そうへい   1922- 昭和 後期 - 平成 時代 の 放射線 遺伝 学者 。 大正 11年5月7日生まれ。 国立遺伝学研究所 勤務 などをへて,昭和38年阪大 教授 となる。のち近畿大教授。放射線による 突然変異 の機構を研究し, 損傷 したDNAの 修復 の 誤り ががん化にもつながることをあきらかにした。福岡県 出身 。 京都 帝大卒。 著作 に「人は放射線になぜ弱いか」など。 とある. 第三版改訂版のまえがきに動機と要約している. 「毒か安全かは量で決まる」とパラケルススの経験則をふまえると,1958年に国連原子放射線科学委員会が 採択した 「どんなに微量でも毒だ」の仮説は誤りで,著者の研究結果を踏まえ「放射線を少し浴びた場合でも被曝による傷が体から完全に排除される」ことの科学的根拠を述べた.この「防衛機構がp53タンパク質の絶妙な働きにより」その魅了と感動を読者に伝えたいので第三版に改訂したとのことだ. 序章では著者の原子放射線との係わりが書かれている. 1945年8月6日に広島の被災1週間後の8月13日に第2次調査班のメンバとして参加している.広島駅に着いてしばらく茫然とたっていた.海が見える範囲までい瓦礫と化して市街が消えていた.原子爆弾による破壊だと思ったという.当時京都大学理学部物理学科の実験原子核物理教室の3回生だったそうだ.爆心近くの光景はひどい火傷や怪我をおったって横たわる多数の人で,それは 私たちが繰り返し聞かされるその話なのだろう.ここを読むと改めて広島と長崎への原子爆弾はトルーマン大統領が決断し実行させた,市民を大量殺戮したジェノサイドだったということを思い起こす. 終戦後の混乱期にありラジオ屋や紡績会社の電気係,熊間と大学の付属高等学校での勤務したが,暇を見つけて熊本大学の物理教室に出入りし理論物理学の勉強を始めた.3年後京都に戻り高校に勤めながら物性論の研究の仲間に入った.戦後の物資欠乏期にあって紙と鉛筆と時間があればできる理論物理学は楽しかったという.液体の表面張力の分子論を原島鮮,岡小天,小野周の諸...

原子力発電事故の基礎知識(8) ー正しく恐怖と向き合うためにー

3.11直後の原発事故に端を発した放射能の恐怖が世の中を覆った.私もそうだった. 無知は不安を増幅する.原発とはどんな危険性を持っているのか.どの程度放射能で影響が出るのか.そう思ってwebを調べてみた.でも特定の情報を固まりとし得るにはwebでは時間がかかりすぎる.やはり編集が入った本しかない,と思えるのだ. そこで3冊の本をAmazonで購入した. 1.「原子力発電(改訂版),電気学会編,1970年初版.1996年改訂版」 2.「人は放射線になぜ弱いのか(第3版),BLUE BACKS,1998年第1刷,2008年第5刷」 3.「内部被曝の脅威.ちくま新書,2005年第1刷発行,2011年第2刷」 1.は直ぐきた.2.3.は2週間こなかった.Amazonでこんなに時間がかかったのは初めてか.本も早く紙の媒体から電子媒体に移行しないとこの2週間は致命的と思った. 1.の本ではいったいどんな放射性元素がウラン238から発生しているのか,それらは発電のどのステージで起こっているのか,もっと知りたいのはヨウ素131はウラン238の臨界核分裂反応からしか得られないのか,今のヨウ素131のモニタから炉内の反応を推定できるのかどうか.を知りたかったためだ. 核分裂反応[1]を読むと,U235,U238,Pu239の核分裂生成物の生成率を見ると原子数76から160まで3桁ぐらい差はあるものの全部生成されている.化学反応のように特定の反応が起こっているわけではない.ヨウ素131は二コブの生成率表で見ると1〜2%のようだ.大気中モニタリングでヨウ素131が検出されたら8日間の半減期のヨウ素131は福島原発の事故由来と思えばいいだろうが,それが臨界だから起きているのか,使用済み燃料棒からも放出されているのかはわからない.引き続き要調査である.なお,[2]のページを見つけた. 原子力工学の本を探してわかったのは誰かがいってたけど,最近の本が無いのだ.原子核の専門書や一般向けの本はあるが,学生向けの原子工学の本が無い.大学で研究がなされていないのかもしれない.これは将来原子力を担う専門家が居なくなる事を意味しており今のうちに手を打っていかねばならないと感じた.日本の原子力発電所の廃炉までは数十年かかるゾ.世界には400機以上あるからビジネスは成り立つと思...

春の里山

昨日歩いた春の里山は小雨でもそれは木々の萌えが美しかった。 鳥を見聞きするのが目的だが花を愛でたり、その他の小動物も観察して楽しんだ。 芽吹き始めた山は霧の中にあってパステル色でそれは美しい。この季節が一番好きだ。 夏鳥はまだ来ていない。ヒガラやシジュウカラ、ヤマガラがさえずり、ウグイスが競う。ガビチョウは少ない。スミレもそこここで可憐に咲いている。コクサギも黄色い小さな花を咲かせている。コクサギは存在感のある匂いを発するが、葉の表面を触った指の匂いを嗅ぐと焙じ茶の匂いがする。この意見に同意してくれる人は少なかったが。 林道ではヤマアカガエルがゆったり坂を上っていた。備忘録で識別のポイントを書いておく。 <茶色いカエルの4種の識別(タゴガエル、ナガレタゴカエル、ニホンアカガエル、ヤマアカガエル[*1]> 指先に丸いこぶがない。もしあればタゴカエル。 背と脇腹の境の筋が目の後ろで内側に曲がればヤマアカガエル。もしほぼ真直ぐならニホンアカガエル。 ネコノメソウも面白い。ヨゴレネコノメソウやネコノメソウの葉のつき方がじっくり見ると巧みにできている。成長にあわせた分岐の時期が異なるだろうに今は見事に全体が水平面を作っている。どうやって水平にあわせるように分岐のタイミングと形状を決めているのか。遺伝と発生の不思議を思う。 (2011.04.10記) [1] 奥山風太郎、 ”山渓ハンディ図鑑9 日本のカエル+サンショウウオ類”、山と渓谷社2002年4月。

原子力発電事故の基礎知識(7) ー原発のリスクとコストー

今日の J-wave、jam the world の15min.を聞いていてモノスゴク腹が立った。 今の流通しているレベルの放射性物質が付着した食べものを食べても絶対に安全であると言い切ったことである。「絶対に」+「安全」の組み合わせである。 それを権威として「安心しました」とコメントする八塩圭子キャスターも不勉強でこちらも安全デマに加担していると腹が立った。腹が立つとはまだ未練があると思っているのだろう。 腹を立てているだけでは前に進まないので自分なりに考えてみた。 ゲストの渡辺氏の論点は、国の安全基準は厳し目に制定されていること、ヨウ素は体内に取り込まれる割合が最大でも20%であること、放射性物質を数品しばらく食べても1000分の1とか1000分の3とかのレベルであることをあげて、だから絶対安全だと言い切っている。 低レベルの内部被曝は確率的リスクである。なので、絶対にとは言えない。正規分布なら確率が0になるのは無限遠である。時間が無限の時間かかって初めて0になる。つまり永遠に0にならない。この意味で絶対安全とは言ってはいけない。 次に確率的リスクとは社会のコストを計算する必要がある。 もし確率が1000分の1のリスクを1000個集まると1つの事象が生じるということ。 福島原発起因の放射性暴露を受ける人口はどの程度であろうか。100万人いたとして、リスクが1000分の1なら1000人発ガンなどの病気になるということだ。 これは原発だけではない。 車の事故で毎年1万人程度死ぬが、このリスクは日本人の人口で割った1万分の1程度だろう。この死亡事故による損失あるはコストより車の利便性を社会が享受するという合意が社会にあると考えられる。 タバコの場合はどうだろうか。副流煙も含めて年間の死亡者がどの程度か知らないが、これも一種のリスクで診察料、 健康保険料を含めた社会コストを負担していると考えられる。 今回の原発事故はどの程度のリスクでどの程度のコストがかかるのだろうか。福島原発で意図的に有放射性物質を大量放棄した日本国はその低レベルの放射性被曝のリスクを広範囲に晒した格好だ。太平洋を囲む諸国の沿岸部ばかりでなく海洋生物資源を食料とするヒトの数を億人単位で増やしてしまったのでは無いかと懸念する。 一人一人のリスクは小さ...

原子力発電事故の基礎知識(6) ー原子力専門家の責務ー

これまで福島原発から遠いので放射能の懸念は放射性物質の摂取による内部被曝が中心と思ってきた. しかし, 福島第1原子力発電所2号機のタービン建屋の外の坑道(トレンチ)で、高い放射線量[*1]などが起こっているとするといったい何に気をつけたら良いのだいと言いたくなる.高レベル放射線の被曝による急性障害と長期間低レベル放射線の被曝による晩発障害とがあるが,ここ事故地から200km圏内でも急性障害に気をつけなければならないといことだろうか. きっとウランも漏れているのではないか.ウラン235が漏れると中性子線もでる.ウランやプルトニウムは重い原子だから遠くには飛ばないと聞く.遠くとはどの程度なのか. ウランの核分裂で発生した中性子線で電子装置内の半導体も障害を受ける.電子機器が障害を受けるとどんな影響が出るんだろう.通信とか電力とかインフラを支えるコンピュータは障害を起こさないのか.プルトニウムの化学的毒性はどうか. ヨウ素だけ考えれば良かった状況が一変した.晩発障害はあるいみ癌と同じでしょうがないと思っていた.しかし,急性障害だと話は全く違うものになる.関東圏も気象によっては高濃度の放射性物質と高レベル放射線を気にしなければならないのか.素人がwebを通じて勉強しても全く安心材料がない.専門家はこれに回答しなければならない. [2011.03.28記] *1: 建屋外にも汚染水 福島第1原発2号機の燃料棒、深刻な損傷か   http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9C81E2E2E3E2E2E2E68DE0EAE2E1E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;at=ALL コメントをいただきました(2011/03/27). from:TABATA 山内さんが、訂正前の文書も付けて 改正版をアップしているのはよいとおもいます。 こういう土俵が欲しかったのですから。 プルトニウムなどに関する化学的毒性についての示唆は貴重なものと思います。まだだれも公言していないのでは。だれか化学者のサイトに質問を出してはどうでしょうか。 私も何かさがしてみます。 福島第一原発の3号炉がプルサーマル仕様だということがいわれていますが、まだ東電当局は明言していませ...