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2月 25, 2018の投稿を表示しています

本人が楽しんでこその科学が最高 読書感想

チョー面白かった。 出だしの科研費獲得の書き出しには面食らったが、その後は快調に著者の筆運びを楽しむことができた。読んでいてワクワクした。 少し前に読んだ "乱交の生物学 2003 ティム バークヘッド著‎"で性的葛藤と精子競争の知識を下敷きとして持っていたが、その説明は圧倒的に本書の方がわかりやすい(4章、5 章)。 でも一番面白いのは、著者による虫の生態に迫る研究の方法と結果だ。例えば、モンカゲロウの調査の話が出てくる。オスが春の夕方、群れで飛びメスをいかに獲得し他のオス を排除しながら産卵に至らせるのかを調べた調査である。その調査きっかけは長い触覚のオスを見つけ、実はそれは長い前足だと気がつきFaceBookにアップして昆虫仲間との やり取りから始まる。オスだけに見られる長い前足は性選択の産物であることに気づき、研究仲間の誰もが交尾姿を見たことがないことに発奮し観察を続けると、昼行性のツバ メや夜行性のコウモリに食べられないほんの30分の間に交尾できた個体だけが次の世代を残せることを突き止める。そしてその交尾のタイミングは概日リズム(体内時計)の進 化の結果であり、深刻な害虫であるミバエの根絶のための不妊オスの飼育の交尾タイミングの課題へと話題は広がっていく。 面白い。 本書で学んだのは、虫たちの性戦略の奥深さだけでなく、個々の個体の個性の発揮と研究者自身が楽しむことの大切さであった。久しぶりに知的興奮を覚えた。