山鳩が傷を癒したという謂れのある鳩ヶ湯に行って来ました。
大野市街から車でおおよそ30〜40分の白山国立公園にあります。標高560mと携帯電話のGPSソフトは教えてくれます。
そこにアオバトが湧き出る鉱泉水を飲みに来ます。また同じ名前の日帰り入浴もできる旅館(鳩ヶ湯)が1件営業しており、アオバトがどこで観れるか尋ねるとすぐ教えてもらえました。すぐ脇の橋の上から対岸に薄く褐色になった法面が見えます。その辺りで水を飲みに来るとのこと。コンクリを打った法面の上に土の斜面から流れ出た湧き水が溜まっているように見えます。よく見るとWEBカメラも設置していあります(自然保護センターが設置したようです)
打波川は透明で水量も多く、魚を追う人にも人気がありそう。橋で見ているとアオバトが3〜4羽から20+羽の群れで山の間を行き来します。照ヶ崎(大磯)の海外に降り立つアオバトの群れとは違って、すぐに湧き水を飲みに降りるのではなく、一旦湧く場所(ミネラルサイトと呼ぶとすると)の上の木立に入ります。群れが止まるのは広葉樹の樹冠から少し下の葉陰だけでなく、枯れ木の先端だったり、杉の先端だったり見えるところにも止まります。
安全を確認できたと思うのか、アオバトが少数でジグザグに降りていき、ミネラルサイトで嘴をつけて吸飲します。WEBではこのミネラルサイトで数十羽のアオバトが飛来し吸飲する様子もアップされていますが、この日の半日の観察では同時に2、3羽が飲んでいるだけでした。ミネラルサイトを擁する小山と対岸の杉の小山の間をひっきりなしにアオバトが飛んでいきます。このミネラルサイトの小山に入るアオバトの数は多いもののその全部がミネラルサイトに降り立って飲んでいるようには思えませんでした。
目的の一つである湧き水採取のため変色したコンクリの下までいきました。変色した法面全体から水が滴り落ちて水たまりになっていました。そこで50mlぐらい水を採取。口に含んで見るとかなり塩味を感じました。もちろん海水ほど塩辛くはないのですが、塩を水に薄く溶かした感じです。薄めの味噌汁やスポーツ飲料よりも薄い。でも山の中でこの塩味は相当な濃度だと思われます。
アブの攻撃をかわしながら採取した水は成分分析をお願いするつもりです。
この日も相当暑く、太陽が雲間に出たり入ったり。昼前、1時間の観察でもう無理と音を上げて温泉の部に突入。この間、鳴き声は1回のみ。
泉質はナトリウム塩化物炭酸水素冷鉱泉(泉源14.2℃)です。成分分析表では1kg中陽イオンではNa+が1894mgで最も多く、ついでCa2+が211mg、Mg2+が44.9mg。陰イオンでは炭酸イオン(HCO3-)が2509mg、Cl-が1835mg、硫酸イオン(SO4 2-)が188.4mgです。遊離成分はメタホウ酸(HB02)が52.7mg、メタけい酸(H2SiO3)が46.3mgでした。
浴槽の蛇口からでる源泉を舐めてみると、かなり濃い感じの塩水です。湯の華はわずかです。
食事をとっていると外は雷音を伴う大雨。あっという間に川は泥水の濁流となり、清流の豹変ぶりに山の荒々しさを感じました。
雨が止み涼しくなったので観察を続けるとなんとクマタカ(juv)が対岸の見えやすいところに止まったではないですか。
そのクマタカは6時半ごろまで同じ場所にいることになるのですが、その間にもアオバトは少数の群れでクマタカの上を飛び交っています。
たまたまご一緒させていただいたカメラマンのかたの話では、クマタカは山の上を旋回することはあってもなかなか間近に姿を見せてくれない。山から一斉にアオバトが飛び立つとクマタカが飛んでいることが多い、と教えていただきました。この密度の濃いアオバトは、タカたちにも狙われていると思います。
森の王者クマタカとアオバト、その捕食・被食のドラマも繰り広げられているのかもしれません。森の中でアオバトがこんなに観察できる鳩ヶ湯はアオバト観察の第2の聖地になるかもしれません。
まとめ、森から照ヶ崎の岩礁に来るアオバトと山の湧き水に来るアオバトの比較。
似ている点:
- 群れでミネラルサイトに飛翔して集まる
- 一旦、ミネラルサイトの近くの森や林に入る(照ヶ崎では後背地のエリザベスサンダーホームの森)
- 来たアオバト全部が水を飲むわけではない
- オスもメスも飲む
- 飲む水は塩分を含んでいる
異なる点:
- 照ヶ崎:後背林から直線的に岩礁に降り立つ
- 鳩ヶ湯:少数の複数の群れがジグザグに降りていく(この日だけの観察です)
半日の観察ではこの位しかわかりませんでしたが、とても充実した観察会でした。
追記:
鳩ヶ湯のおかみさんは雨になったら傘を貸してくれたり、ここのアオバトのことを教えてくれたり、とても親切にしていただきました。「アオバトの不思議(こまたん)」を進呈しようと思います。
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