スキップしてメイン コンテンツに移動

サンショウクイの亜種同定に挑戦

今日(2017-03-17)、サンショウクイの声を聞いた。

この冬中、この近辺に居た亜種リュウキュウサンショウクイかと思ったが、ひょっとして亜種サンショウクイが渡って来たのかもしれない。

今日聞いたサンショウクイの声はこちら→。高速道路の脇でたまたま録音できたが雑音が激しい。低音をカットしてノイズ除去してみた。

3月中旬と渡りには早いと思われる。時期的に微妙なので、三上2016による判定を行った。詳しくはこちら


第3音節の解析

もとめるのは6つの音声要素パラメータ。

  •   a : 先頭の周波数,
  •   b : 第一音素の最高周波数,
  •   c : 最高周波数,
  •   d : 最後の音素の最高周波数,
  •   e : 節 の長さ,
  •   f : 最大音圧の周波数,

これらを声紋と音節全体のスペクトルでfを求めた。用いたのはAmadeusProVer.2.3.1を使用。FFTサイズは512ポイント。

ヒリリリを一つの音節とすると第1音節は途中から始まるのでNG、第2−4を分析すると次のようになった。声紋の音圧を示す色から最大値を読取った。三上(2016)に依ると判定値が正なら亜種リュウキュウサンショウクイの可能性が高く、負なら亜種サンショウクイの可能性が高い。

判定結果:
 # a b c d e f 判定値
第2音節 5156 5453 5703 5640 311 5587 0.23667
第3音節 4859 5281 5620 5468 331 5423 -0.28205
第4音節 5015 5226 5778 5625 540 5383 0.00429
(単位:eはms、それ以外はHz)

微妙な判定値だ。b-dは-187, -187, -399(Hz)でどれも負。しかし、音の高さ(f)は5500Hz前後で亜種リュウキュウサンショウクイの分布に重なる。

さーてどっちでしょう。



<2017−03−20>

リュウキュウサンショウクイでいいようです。三上さんに確認して頂きました。ありがとうございます。以下も参考になるとか。

  • 亜種リュウキュウサンショウクイは全体的に周波数が高い点
  • 亜種サンショウクイはリズミカルで、リリリリの音素にばらつきが大きい

<2017-04-15><2017−04−15>

またしてもサンショウクイの声→。2音節を分析すると、三上判定式ではかなり大きな正の数字。亜種リュウキュウサンショウクイでしょう。こうなるとこの地区でのサンショウクイの夏の動きに耳が離せません。なお、目の前でヤブサメが思いっきり大きな声で囀っていましたが、7KHz以上をカット、3KHz以下もカット。それはこのツールを使いました。




解析値:
o170415_0724サンショウクイ_BPF

第3節
 a = 5484 Hz; (*先頭周波数*)
 b = 5554 Hz;(*第1音素最高周波数*)
 c = 5718 Hz;(*最高周波数*)
 d = 5672 Hz;(*最後の音素の最高周波数*)
 e = 385 ms;(*節の長さ =00'07"667-00'07"282 *)
 f = 5520 Hz;(*:最大音圧の周波数*)
 subSpecies[a, b, c, d, e, f]=0.85311

第4節
 a = 5507; b = 5547; c = 5953; d = 5695; e = 392 ms; f = 5760 Hz;
 subSpecies[a, b, c, d, e, f]=1.04537


<2017−04−15>
なんと同じ日の海側の山ではサンショウクイが鳴いていました。姿は確認できなかったですが録音した声紋から三上判定式を用いて解析した所、大きなマイナスの値。亜種サンショウクイです。近くに2亜種いた事になります。


s170415_102424DR_サンショウクイ@横穴上杉林_BPF.wav


第1節
In[5]:= a = 4138; b = 5437; c = 5554; d = 5273; e = 459; f = 5240;
subSpecies[a, b, c, d, e, f]
Out[6]= -1.00221
第2節In[7]:= a = 4171; b = 5109; c = 5191; d = 4875; e = 521; f = 4818;
subSpecies[a, b, c, d, e, f]
Out[8]= -1.02661
第3節
In[11]:= a = 4406; b = 5238; c = 5238; d = 4886; e = 464; f = 4818;
subSpecies[a, b, c, d, e, f]
Out[12]= -0.64651
第4節
In[13]:= a = 4162; b = 5285; c = 5285; d = 5027; e = 455; f = 4818;
subSpecies[a, b, c, d, e, f]
Out[14]= -1.15394
第5節
In[15]:= a = 4089; b = 5531; c = 5625; d = 5414; e = 489; f = 5286;
subSpecies[a, b, c, d, e, f]
Out[16]= -1.07395
第6節In[17]:= a = 4242; b = 5168; c = 5261; d = 5168; e = 458; f = 4818;
subSpecies[a, b, c, d, e, f]
Out[18]= -1.28242
第7節
In[19]:= a = 4218; b = 5566; c = 5613; d = 5320; e = 447; f = 5099;
subSpecies[a, b, c, d, e, f]
Out[20]= -0.94825





参考文献:
三上かつら, 2016, 日本のサンショウクイ 2 亜種の音声の違いと簡便な判別法,Bird Research, Vol. 12, pp. T1-T8

コメント

このブログの人気の投稿

瞬間日記のデータをday oneに移動させるのだ

瞬間日記をiPodを購入した2010年から使ってきたが、day oneが人気なので使ってみた。なかなかよかった。コマンドライン(CLI:Command Line Interface)から入力できるし、クラウドで同期できるのもいい。見た目もきれい。安定しているのもいい。 という訳で、瞬間日記からday oneにデータを引っ越しすることにした。 (このページで半角の &gt; と表示されたら半角の”>”記号だと思ってください。HTMLの仕様のインプリバグでしょう。) 特定の日記アプリ間のデータの移動とは人生で一回しかないだろうから汎用性など考えずに間違えないように慎重にすることが大切だ。確かめて確かめて。このページはそんな備忘録である。また、瞬間日記のデータをday oneに移動させたという記事も見つけられなかったので誰かのお役に立てるかもしれない。でも自己責任でね。 瞬間日記は独自フォーマット(.dat3)や標準的な(.sqlite)、(.csv)でもMacにバックアップできる。使い勝手のいいcsvファイルは本文だけで写真情報が欠落している。瞬間日記のデータを引き上げるのは色々試したが、テキストばかりでなく写真も移動させたいの結局メールでバックアップすることにした。瞬間日記側で自分にひと月毎のバックアップをメールする。3年半分。ソチオリンピック開会式を見ながら作業でもれなく終了。 これは瞬間日記が30枚しか1つのメールに写真を貼付できないので、ひと月分だけせっせとメールする。 届いたメールはOSX側のmail.appで開くが、~/Libraryに保存されているelmsでなく、単にテキストファイルでmail.app側の機能を使って出力することにする。 瞬間日記のデータを取り出し、day oneにエントリできるくらいの粒度のファイルにするまでの流れ: iPodの瞬間日記のひと月分に区切ったバックアップデータを自分のメールアドレスに送信する OSXのmail.appで受信したメール全部(件名"MomentDialy"で始まるメールを一つのメールボックスに束ねる。例えばMomentDiaryというメールボックスに全部入れる mail.app上のメールボックスMomentDiary内の全部のメールを選択する。つまり⌘+a。

鳴き声からの識別(How to identify the bird from its sound. )

鳥はその暮らしの中で様々な音を出します。 朗々と鳴く囀り、冬の地鳴き、飛ぶ時の羽音、何かを突っつく時の音、翼を体にぶつけて出す母衣(ほろ)うち、虫を探しているのか枯葉をひっくり返すときにでるカサコソと言う音。その中にあって、自己を主張しコミュニケーションとしての囀りや地鳴きの声は鳥の名前を探り当てる大いなる情報です。 鳥の鳴き声を聞いて、なんて言う鳥が鳴いているんだろう、とバードウォッチングの最中に思う事はしょっちゅうです。ベテランのバードウォッチャーはこの声は○○と教えてくれます。では、聞く相手も居ないとき、バードウォッチングしている仲間の誰も分からないとき、鳥の声からどう鳥の種名を探り当てる事ができるでしょうか。このページではそんな事を考察したいと思います。 参考にするレファレンスCDはこの4冊:蒲谷1996(蒲谷2004)、上田1998、松田2016、植田2014、このページの下にリンクを張りました。この他にも、 バードリサーチ鳴き声図鑑 もあります。 xeno-canto も有名です。 それでは、鳥の鳴き声から種名同定までの幾つかの方法を見て行きましょう。 初級編 方法1)探鳥会で人に聞く 当たり前ですが、知っている人に聞くのが一番手っ取り早いです。 バードウォッチングの初心者は見るモノ聞くモノすべて新鮮で教えてくれる人もたくさんいます。探鳥会に参加してその場所で年中見られる普通種をまず覚える事になります。これが”ものさし”となってこれと同じか違うかが分かれば、聞き分けられる数が多くなってきます。 方法2)さえずりナビを試す。 バードリサーチが”さえずりナビ”をスマートフォン向けに作っています。 家の周りで,ハイキングに行ったとき,鳴いている鳥の種名を知りたくなることがあります.「さえずりナビ」は,場所・季節・声のタイプなどから,その鳴き声の鳥を検索してくれます.姿や形の専門知識が無くても検索ができ,その鳴き声を聞くことができます. あまり使った事無いのですが、twitterではまあまあのコメントが多いです。 中級編 方法3)録音して似ている声をCD/WEBで調べる 録音できれば後で調べる事ができます。ICレコーダも小さく安くなってきました。持っていなくても携帯電話やコンパクトカメラの動画機能でとりあ

電解コンデンサの容量抜けを測ってみた

中古オーディオ屋でスーパーウーハーを買ってから7〜8年経つだろうか。 1989年に発売されたONKYOの SL-10 という機種で、現役で商品が店頭に並んでいた時にピアノ曲に深みが増すことにちょっとした感動を覚えて中古屋で見つけた時2万円で即購入したのだ。 スピーカのエッジのクズがエンクロージャのダクトから出てきて開けてみたら見事エッジ全体が下手っていた。これを奇麗にして、ウレタンエッジに交換することにした。写真1、と写真2がそのBefore/Afterだ。 写真1 SL-10のスピーカのエッジを交換してみた (エッジを取り除いた状態) 写真2 SL-10のエッジを交換したスピーカ また、SL-10が勝手に自己発振する様になっていたのでコンデンサの容量が抜けたと想像してこれらを交換することにした。これは電解コンデンサの容量が抜ける事でフィードバック回路の時定数が変わってしまいネガティブフィードバックがポジティブフィードバックに位相が回って知ったのでは予想した。 電解コンデンサを交換したSL-10のコンデンサ 交換した電解コンデンサ達(容量は抜けていなかった)  マルツ電波で発注しておいたオーディオ用のコンデンサを付け替えた。ただ、それだけでは詰まらないので交換したコンデンサを測ってみた。使った測定器は卓上テスタ(GBW 9000A)の付属機能。最大20μFまでしか測れなかったが、結論からすると交換した電解コンデンサの容量抜けは無かった。 測定例 定格(μF)   実測(μF) 10       10.19 10       10.00 4.7       4.78 3.3       3.27 1.0       1.01 0.47       0.46 というわけで直しても自己発振は直らないかも。明日組立ててみよう。