「何が問題か?」:改めて今回の福島第一原子力発電所の事故で何が問題かを整理する.問題点はつまるところ2点.
- 放射能被曝
- 東京電力の発電能力低下とそれに伴う関東の電力不足
2点目の電力不足は計画停電で回避策が短期的にはとられている.受益者である東電の給電エリアの関東の人が甘んじて受け入れなければならない.
問題は1点目の放射能被曝.放射能とは広い意味で放射性物質と放射線を含む.ここでは広い意味で使う.被曝に影響する核分裂時に生じる放射能とは次になる[*1].
- 核:α(アルファ)線,中性子線 (質量のある粒子)
- 高エネルギー電磁波:γ(ガンマ)線,X(エックス)線,(質量の無い電磁波)
放射線とはこれら両方を言う.また,被爆には2種類ありそれで対応が異なる
- 外部被曝(人体表面から体外から直接放射線をあびること)
- 内部被曝(食べ物や呼吸から取り込まれた放射性物質から体内よりあびること)
このうち外部被曝をさけるには,
- アルファ線を防ぐ = 皮膚全体が出ないように覆う.
- 電磁波を防ぐ = ガンマ線,X線とも透過力が高く鉛や金,コンクリートなどでしか遮蔽できないが,距離の2乗に反比例するので数km離れれば問題ない.
- 中性子線を防ぐ = 質量数の小さい物質のほうが効果的に遮蔽でき水素や炭素を多く含む物質、例えば水やポリエチレンで遮蔽できるが,こちらも数km離れれば問題ない.
つまり,汚染源から離れる事である.
次に内部被曝をさけるには,
- 放射性物質を体内に取り込まない(食べ物や飲み物から内蔵へ,吸気から肺へ,傷から血管への入る経路)
につきる.これは体内に取り込まれた放射性物質は細胞の表面で核分裂するので,これからの放射線のエネルギーと生体への影響は距離が短いので大きいためである.ただし,自然界にも放射性物質はラドンなどが存在する.そのため,体内に取り込んだ放射性物質の量が問題となる.
問題となる放射性物質の量はいくらであろうか.
まず単位はシーベルト[Sv]で,生体への被曝線量を表わす.シーベルト(Sievert、Sv)とは、被曝線量という生体が受けた放射線の総量で、放射線の強さではない[*2].
法律により許容される被曝線量(自然放射線や治療による被曝を除く)[*2,*3]は
- 放射線や放射能を扱う医師、レントゲン技師、看護師は20[mSv/年]を超えないこと
- 一般の人は1[mSv/年]を超えないこと。この上に自然放射線量が2.4[mSv/年]ありますので、これを加えると3.4[mSv/年].これは約0.4 [μSv/h]の環境に1年間いてその間に被曝する量に相当する.
緊急作業の被曝限度(総量)を250ミリシーベルトに上げた .1時間当たり400ミリシーベルトの放射線が出る現場では、限度100ミリシーベルトでは15分しか作業できないが、250ミリ以下だと30分以上作業できることになる[*8]. (2011/3/15 日経新聞)
次にどの程度,汚染源から離れていればいいんだろうか.史上最悪の事故であるチェルノブイリを参考にする[*4].
チェルノブイリ事故をまとめると,
- 1986年ウクライナで原子力発電所の炉が点検を利用した実験中に融解し爆発した.
- その結果,推定10トンの放射性物質が放出された(広島に投下された800gのウランを持った原子爆弾の放出量の400倍).
- 放出された主な放射性物質はヨウ素131、ルテニウム103、セシウム137など
- 事故直後の健康被害は主に半減期8日の放射性ヨウ素によるもの.
- プラントから30km以内の居住者11万6千人が一週間後までに移住.最終的に30万人が移住.
- 86万人が事故処理にあたり5万5000人が死亡(2000年4月).
- 長期的には、半減期が約30年のストロンチウム-90とセシウム-137による土壌汚染が問題.
- 雨や地下水による流去は無視できるほど小さいことが実証されているので自然消滅の主な原因は、セシウム-137がバリウム-137へ自然崩壊と予想.
である.問題は内部被曝を起こす放射性物質の拡散距離である.チェルノブイリ事故ではセシウム-137の資料が入手できた[*5].解読しにくいが15-40Ci/km2以上が300km以内,5-15Ci/km^2で600km以内か.ここでCiはキュリー.放射能汚染地区が点在するのはそのときの風向き天候によるもの.つまりいったん放射性物質が放出されてしまうと後は風任せなので数百kmのオーダで拡散する事になる.ちなみに,福島から300km範囲内に東京都や神奈川を含む.
ここで問題になるのは,どの程度放射性物質が拡散されても許容できるのかである.次にこれを調べてみよう.
*ちなみに,ホウレンソウに国の暫定基準値を超えたヨウ素131が見つかったが,これを時間を置いたら全く無害で食べていいという立場[*6]と基準値を超えたものは食べては行けない[*7]との意見がある.
(2011年03月21日)
(2011年03月21日)
参考URL:
*1:wikipedia
*7:武田邦彦(中部大学) http://takedanet.com/2011/03/19_5fa2.html
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