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スゴイ本だ。水村未苗著「日本語が亡びるとき」英語の世紀の中で を読んで

スゴイ本だ。

ここまで、日本語の来し方と、行く末を深く考察し、今何をすべきかを解いた本に出会ったのは初めてである。これまでも、大野晋「日本語練習帳」、山口仲美「日本語の歴史」、山口謠司「日本語の奇跡」、小駒勝美「漢字は日本語である」など話題の本、タイトルが興味深い新書を読んで来た。

所がである。歴史の流れ、特に近代の日本が置かれた帝国に飲み込まれないかねない危機的状況の中で、それを回避せんがため如何に日本語を国語として発展させざるを得なかったを見事に書き下している本には出会わなかった。それは父親の仕事の関係で12歳で渡米したものの米国と英語に馴染めずにかといって帰国できる訳も無く、日本文学全集を読むことで自分の孤独感を紛らわせ、日本人としてのアイデンティティを保とうとして来た著者のその生い立ちに追うところが大きい。人は自分の立ち位置を離れ相対化することで、初めて自分の立ち位置がはっきりと分かるようなのものであろう。それゆえ、日本で日本人として生まれ育ったものには分からない感覚なのだ。

本書の主題は、もちろん日本語にあり、日本語が滅びるとは叡智を求める人が英語の知の図書館に吸い寄せられ、日本語が光放つことはないという憂いにあるが、それは世界の普遍語として英語が唯一無二となり更にインターネットの普及により更に英語が世界中の知性である読まれるべき書物を引き寄せることの裏返し、日本の無策な教育と日本語の大切さに無自覚さで起こると解く。そして、英語を母国語とする人々の二重言語者の苦悩と無邪気なまでに普遍語としての英語の力について無邪気なまで鈍感さを嘆く。




著者は気がついていないのだろう指摘がないが、無邪気なまでに鈍感な日本人の日本語の心配のなさは、英語を母国語とする英語の鈍感さと同じであると思う。構図は同じである。少なくとも英語を日本語並みにスラスラとは読めない普通の日本人には、日本語を相対化することができないのだ。英語で読み書きし母国語とするネイティブには英語の普遍語としての意味を見いだせないように、日本語しか読む必要の無い日本人にはその価値が分からない。日本語だけの研究でノーベル物理賞を取ったではないか(周りは世界と繋がげることに相当苦労されたと思うが)。だから何となく日本語は大丈夫という感覚は自分の中にもある。

本書は日本語と英語、そしてフランス語をそれぞれを相対化することができた希有な経験を持ち、かつ、学問とは異なるアプローチで人の存在意義を問おうとする文学という言葉と格闘する人である。だからこそ、その経歴を持つ著者ならではの視点で、読まれるべき書物が日本語で書かれないという日本語の滅びに警鐘を鳴らし、日本語の偉大さ美しさ奥深さを大事にすべきと忠告する。

日本人の基礎である日本語の行方が将来の日本の運命を大きく変えうるとの指摘がなぜなのかを知りたい方は是非読むべき本であり、また、読まなければならない書である。

なお、英語に背を向けて仏文を大学院まで勉強したためかもしれないが、論理の展開が分かりにくい。同じ論旨が違うフレーズで多数回語られるが、段落毎に論理が展開される英語とはかなり、論理の深まりは浅い。ため、読みにくいことはお伝えしておく。

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