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鳥の鳴き声大図鑑(Birder 2017年04月号)を読んで

鳥の鳴き声大図鑑(Birder 2017年04月号)を読んで

 


最近、本やCDなどレガシーメディアでの鳥の声の情報が増えている。うれしい事だ。これらはきちんと監修されているので信頼に足る事が最大の長所。短所はネット情報に比べて、掛かるコストが高い事だが、監修と信頼がその値段だと思っている。

楽しみにしていた本号であり、書評を若干。

全体を通して前半の記事は特集の意図を汲むものだが、後半の記事はテーマの選び方が散漫な印象。初心者〜ベテランまでバードウォッチャーが本当に知りたい、”知らない声を聞いたんだけど、それは何かどう調べたら良いんだろう”などの疑問には明快には答えてくれない。それでも鳥の声の第一人者で日本野鳥の会理事の松田さんの総論と、25種の解説は知らない事も多く一読の価値がある。また、鳴き声に文法を持つシジュウカラの最新研究はバードウォチャーは必須の知識でもある。

特集のみにフォーカスする。
8個の記事と1つのコラムからなり、特集の説明は「鳥が見つからない原因の80%は鳴き声を知らないからだ!」なので、初心者を意識したものだろう。そのため、最初の記事は松田道生さんに依る「野鳥観察に鳥の声が重要な理由」がうまくまとめられている。鳥は声で見つけるが、日本語に置き換えにくくそのため覚えにくいこと、分からない事も多いが地鳴きは鳥の気持ちを表し、鳥の気持ちがわかるバードウォッチングができるなんて考えると楽しくなると締める。

その後、覚えておきたい25種の鳥の声の解説がある。1番のヒヨドリから、シジュウカラ、カワラヒワ、など25番のアオバヅクまで続く。それぞれの解説には短いながら”おお、そうなんだ”と松田さんならではの説明がある。中でも気になったのはヒヨドリの地鳴きとさえずりがはっきりしないこと、コゲラのドラミングは10分以上続けうること。また、キジバトのデデポポはさえずりとして取り扱っている点も興味深い。ハトのさえずりについてナワバリ宣言の機能もあるのかなどもっと伺ってみたい。

梅垣佑介さんによる「鳥を見える化するソナグラムの活用」は最も期待していた記事だ。記事ではソナグラムを用いた識別の例としてニシオジロビタキとオジロビタキの震える声(トリル)の違い、エゾムシクイとアムールムシクイの声の高さの違いを挙げて種識別できると説明している。これはマニアックすぎる鳥の選びかた。普段の鳥見で聞く鳥の声で分からないことも多いので初心者が録音で取り組んでみようと思える題材が良かったろうに。似ている普通種の比較とかその方法論とか読みたかったな。カラ類、セキレイ類、ホオジロ類、アトリの仲間の似てる声とか。ここまで分かっているとか分からないとか。鳥の行動と鳴き声の関連の理解は今後ますます発展して行くだろう。その方法論の記事も読みたかった。

田中謙介さんの「鳥の出す音」に注目した点は意欲的だ。ドラミングや葉っぱをひっくり返す音で種識別は難しいと指摘の通りだが、オオジシギの尾羽数と出す音が進化の視点で語られたのは斬新だった。その点で氏原巨雄さんのカモのハイブリッドの声はどちらに似るのかも面白い視点だ。関係を見いだすのは自然界ではなかなか難しそうだが、カモの声が生得的なのかどうか興味がある所。観察の注意喚起になったと思う。

鈴木俊貴さんの「シジュウカラの単語と文法」はニュースで取り上げられるほどに有名なので知ってはいたが、改めてきちんと読んで骨子を理解できた。鳥にも言語があると示す事例を自分でも調べたいと思えた。こういう触発される記事が良い。

その他、鳴き合わせとホオジロの聞き做し、テレビに出る鳥の声の記事は、雑学としては面白いが実践的ではなくロッキングバードウォチィング向け。

それでも野鳥写真とは別の流れの鳥の声に焦点を当て時流を得た特集号だと思う。渡り鳥の渡去前のさえずり、夏鳥の声、それらのきっかけに充分なる特集号である。

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