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環境音があってこその野鳥の声、Woodieの野鳥録音の仕方

春雨にぬれそぼるの紅葉(越前市花筐公園にて)
街から自動車のエンジン音がなくなる日が来ることを考えていた。
野鳥の録音を趣味にしている人が増えてきているようだ。PCMレコーダが安価になり、また蒲谷鶴彦さんを初め松田道夫さん、上田秀雄さんなど先人の努力の賜物だと思っている。

私も1970年代の中学生時代のラジカセで生録(蝉時雨、虫の音とか)を初体験し、80年代後半に始めたバードウオッチングで、鳥の声から鳥を識別できたらどんなに素敵だろうと識別勉強の目的で1990年代入ってMDにガンマイクを接続し録音を開始した。これは光ディスクに書き込む時のメカ音がかなり大きくてそれが録音されてしまい、それを避けるのに難儀した記憶がある。2000年入ってsony初代のPCMソリッドレコーダPCM-D1を購入したりした。

鳥の声も野鳥の写真と同じで色々な楽しみ方があっていいと思う。まだ私の考えはまとまっていないが、好き嫌いの傾向はわかってきたので備忘録的に書き留めておく。
  • 図鑑型:写真を多用したる野鳥図鑑では一種毎にその主を代表する個体の写真であって、識別ポイントがしっかり写っていることが重要であろう。そのためどのような環境下で撮影されたのかは二の次であり、複数の種が同じ写真に納まっていることはまずない。野鳥大鑑(蒲谷鶴雄)、野鳥の声(上田秀雄)は図鑑そのものだ。鳥の種類毎にその鳥の声しか入っていないようにしてある。川のせせらぎ、他の種の鳥の声など極力排除しようとしているし、そう音声の編集をしていると思う。つまり加工臭がかなりする。
  • ネイチャーフォト型:図鑑型に対して自然そのものの美と捉えたネイチャーフォトは鳥の生きている環境を重視しているようだ。写真から物語を紡ぎだせそうな秀作も多い。鳥の録音では日本野鳥紀行(蒲谷鶴彦)がそれだろうか。
最初は図鑑型の録り方を手本として、どうすれば一種類だけの鳥の声を録音できるだろうと試行錯誤してきた。その答えがパラボラ集音器やガンマイクだった。それでも、声ならばその狙った種以外にもどうしても他の種の声や、町の音、飛行機の音が入ってしまう。プロはすごいものだ。狙った鳥だけ浮かび上がらせる録音の技術も加工・編集の技術もさすがだと思う。

しかし今は、環境音がしっかり入っていてもそれはそれでいいと思える。電車や自動車の音が近いと里山だろうとわかるし、人の作り出す音が鳥たちにどう影響するのかも考えるヒントになる。

そして、10年後や20年後、50年後に聴いたときに、別の印象を持つはずだ。当時は鳥が少なかったんだなーとか、自動車はエンジンで動いてたんだーとか、こんな密度でこの鳥がいたんだーとか。現在の視点では見えてこない時間の流れの鳥と人との関わりの変化にきっと気づきがあるはずだ。人的活動の変遷が鳥を含む環境にどう影響したのか、その一つの手がかりにしてほしい。それにはそのための自然環境丸ごと録音が重要になると改めて思う。

今行き着いた録音方法は次の通り。

  • マイク:鍼灸練習用の耳にコンデンサーマイク(Panasonic WM-61A)を埋め込み左右を自分の頭と同じ距離に保つ(耳君)。一種のバイノーラル録音。
  • 集音器:直径44cmのパラボラの焦点に耳君の左右中心点がくるように取り付ける(左右の耳が焦点にないのでどこの音に感度があるのか調べるつもり)。しかし、パラボラがあると耳君型マイクで録ったものと比べて透明感が劣る。耳君だけだとすばらしく透明感がある。この素の生音を録りたいのだが、パラボラは周波数毎の指向性が異なるので仕方が無いのだろうけど、聴いた感覚は何かしら高域に延びがなく中域が強調されギラギラした音になる感じがする。また、結構集音方向以外でも音を拾うので環境音録音に適していると思う。
  • 録音機:取り扱いやすいサイズのXacti(Sanyo)
  • 録音モード:96KHz/24bitでPCM録音(非圧縮)、Low Cut Filter = OFF、Peak Limiter = OFF
  • マイクアンプ:キットを入手しオペアンプを載せ低ノイズ化をはかった
  • 三脚:必須 手持ちだとどうしても自分の動きに伴う不要な音が入ってしまうので。
  • ヘッドフォン:必ず録音時にはヘッドフォンでモニターしながら録音する。
  • 録音場所:事前に下見して、自動車や鉄道などの人口音が極力小さい場所でかつ鳥が多そうな場所を選んでおく。
  • 録音時間:鳥たちのモーニングシャワーを録る時は少なくとも夜明け前30分から現地入りし、気が済むまで続ける(2時間程度)
  • 記録:モニター音を確認しながら、聞こえた鳥、気がついたことをField Noteに書き留めておく。このとき自分の音が入らないように距離を保つが、立ち位置はパラボラの集音方向と鉛直位置に来るようにする。3.5mmφのミニプラグで3mの延長ケーブルを使えば2m離れられこれくらいで十分気にならない。パラボラ無しで耳君だけだと5mは離れたい。パラボラに音の選択性があることで自分のノイズを拾わないのも使い続けている理由だ。
  • 電磁ノイズ対策:必ずiPhone、iPadなどの電子機器のスイッチは切っておく。iPadもWiFiを探しにいくのか電波を出す。xactiとiPadが近くにあると電磁ノイズが盛大にノイズ音となる。
今の方法でパラボラを使いながらかなり広がりのある録音ができている。とりあえず満足。鳥の声は楽器録音と比べて小さい。PCM-D1も、Xactiもマイク感度を最大にあげるとホワイトノイズが大きい。そのためマイクアンプを自製しホワイトノイズも我慢できるレベルになった。低音も豊かになった。この辺りのホワイトノイズとオペアンプの関係は別の機会に。

コメント

言葉の量化と数の言葉の量化 さんのコメント…
≪…和と積の世界のつながりとして物語…≫は、
『HHNI眺望』で観る自然数を4冊の絵本で・・・
「こんとん」夢枕獏文 松本大洋絵
「ゆうかんな3びきとこわいこわいかいぶつ」スティーブ・アントニー作・絵 野口絵美訳
「みどりのトカゲとあかいながしかく」スティーブ・アントニー作・絵 吉上恭太訳
[もろはのつるぎ」(有田川町ウエブライブラリー)

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