この週末(2009.07.18-19)はETCで高速1000円ポッキリを利用して、地元の友人たちと清里高原と入笠山に行ってきた。
主な目的は鳥見(バードウォッチング)なのだが、湿原の花とか虫とかもついでに見てきた。
早朝に自宅を出て須玉ICと清里の間の道の駅に着いたのは7時頃。朝食のおにぎりをほお張りながら行き来するツバメを見ていると、近くの山からガビチョウの聞き慣れた声がする。あ〜、こんな所まで普通に聞こえるようになったか。
気を取り直して、国道141号線を清里に向かい、山梨県と長野県の県境尾根から赤岳に続く登山道を途中小雨ながら1kmほどあるく。その間、メボソムシクイ、ウソ、ルリビタキ、コガラ、アオジ、ミソサザイなどを聞く。地面に目をやると、セセリチョウの幼鳥が芽吹いたばかりの丸まった若い笹をかじり、その葉が大きくなって広がって、かじった部分が複数の穴となった葉を見た。そんなことがあるんだ。良くそんなことをしっているなこの人たちは。
八ヶ岳牧場に移動すると、ノビタキ、ホオアカやアオジが虫を加えてそれぞれの巣と思われる地面に降りていく。空気は霧で覆われたり、少し晴れたりしたが、薄くなると黒々とした八ヶ岳の森が透けて、霧の中に何か黒い煙のように見えた。そんな中をアオアツバメが飛んでいく。ツバメの完全アルビノが飛んでいく。一瞬、シロアジサシかと思った。あー、びっくり。
大学で植物と動物の関係を調べている一人の友人は、草本より木を覚えるのが難しいという。花期だけでなく花の無い秋なども確実に識別するためには葉での識別が必要でこのためには、
馬場多久男著「葉でわかる樹木」信濃毎日新聞社
が優れているという。その彼女とは面白い話ができた。私は植物は種類が多すぎるので科のレベルなど大括りで識別できればいいのではないか、と思っているが、それをいうと植物にも他人の空似は多く、科を跨いでの空にも多いので科のレベルの識別は難しかろうというのが彼女の率直な意見。ま〜、分からない/知らないことの言い訳なのだけど、それでも面白い議論ができた。
私:「ある植物はなぜ他の科の植物に似るの?」
友人:「進化の収斂もあるが、擬態もあるよね。」
私:「ベーツ型擬態(笑)?」←無毒のアゲハモドキが有毒のジャコウアゲハに擬態していることがその一例。
友人:「虫とかに食べられないようにしたら似てきたとか?」
私:「ジャー、蝶々はなぜ偏食家(狭食性)が多いの?」
友人:「(ツリフネソウと長い口吻を持つ虫の共進化を例に、)柑橘などの蝶に食べられる植物は食べられないように毒を強化するが、その抗毒性機能を更にその蝶が獲得する。そして、また毒を強化するなど繰り返し、その共進化が進むとその蝶はその植物しか食べられなくなったのではないのか。」
私:「なるほどネ〜。ではなんで蛾は広食性?というよりその蝶はなぜその他の植物は食べられないの?そもそも青虫は植物のセルロースを分解できるの?」
とか、なぜが頻出し、なぜ似た植物があるのかには答えが出ませんでした。途中の議論では、太陽の光を最大効率で受けるため、日光のあたり方が決めているのでは、とかでました。
う〜ん、面白い。旅やフィールドに出るのはそこでしか感じられないことや疑問があるためだ。いい疑問を持ち、それを考えるのはその人の人生を豊かにするよね。
植物って割に幾何構造を持ち、工学的なアプローチができる気がする。
その後行った富士見町の「水神の湯」では庭にたくさんのネジバナが咲いていた。中には右巻きも左巻きもある。その比率を勘定してみた。サンプル数が25程度だが、左巻き:右巻き=3:2だった。湯上がりで汗だくだったけど、面白かった。
入笠山のロッジで一泊させていただき、翌日夜明けの鳥のコーラスのシャワーを浴び、湿原で花ウォッチングを楽しむ。クガイソウの名前の由来は、輪生する葉が九つの層からなるとあるが、そんなに多く無かった。サンプルは3個ながらどちらも9以下の5〜7層だった。でも、この輪生の葉の層は一定間隔で、下から順に大きくなり、中で折り返し先端の花部でまた小さくなる。その外縁を結ぶと縦に細長い菱形になっている。これも幾何構造だよね。
種を同定することで対象を見分ける目は養われるが、それだけじゃもったいない。いい疑問を持って、仮説を一杯だし、知的にたのしむのが本当に面白いよね。
長くやっているバードウォッチングではそんなことも忘れそうになったことを思い出せたいい小旅行だった。
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