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「振動力発電のすべて」速水浩平著

おすすめ度:★★☆☆☆




本書は、音や振動から電気エネルギーを得る振動力発電についての夢と将来像を描いた書である。原理は至ってシンプルで圧電素子を用いて振動エネルギーを電気エネルギーに変換する。しかし、問題はその効率の低さである。著者は工夫の末、外部に共振系を圧電素子に取り付け、振動エネルギーを効率的に伝えた点と、共振系に固定端を構成してより、伝搬効率を高め、実用レベルに仕上げたと主張する。

 著者はその原理を小学校の時に着想し、大学2年生のときに研究室の発表会でテーマとして取り上げ、さまざまな失敗と工夫の後、12月にLED20個点灯に成功させたのだった。もっとも、この時はスピーカである磁石にまかれたインダクタンスを振動させることで誘導起電力を得る方法だったが、効率向上が望めないと判断し、直後圧電素子に変更している。原理は昔から知られており低効率のため大したエネルギーは取り出せないと皆が思い込んでいたなか、そのドグマに染まっていない幸運に恵まれていた。私も、中学生のときに似た体験をしていることを覚えている。電源なしのAMラジオを自作した際、イヤホンから音楽が聞こえるのだから電波エネルギーを使ってスピーカを鳴らすことはできないかと思っていた。しかし、[ラジオの製作」と言う雑誌に電波エネルギを用いてスピーカを駆動することは無理であるとはっきり書いてあり、偉い人が言ってるんだからそうなんだろうとドグマに染まった経験を持つ。

 この著者の速水氏が偉いのは、小学生の時の着想を大事にし大学で発明し、それをビジネスまで高めたそ点にある。大学を選ぶ際、慶応大学の湘南キャンパスを選んだのも、将来の起業を意識したからで、大学に入るとベンチャー支援組織(SIV)を探しあて、1年生のときからビジネスアイディアコンテストに参加するというその行動力の高さである。

 本書は日本実業出版社からの出版であることもあり、タイトルとは裏腹に実用書に徹している。その振動力発電についてエンジニアリングのレベルではまったく納得感が薄く、実のところ技術のことはよくわからない書物である。というより、細かいことはまだ明らかにせずにその将来性、応用の広さを喧伝することに目的があるように思われる。同じことが何度も書かれており、論理の展開も弱く、文章も稚拙なのだが、その技術を世界中に広め低炭素社会実現に貢献したいとの熱い思いは伝わってくる。1時間もかからないで読めてしまう本であるが、夢と人生を自分の技術にかけた若者の登場に頼もしくもある。

 技術は正直なので、うまく応用につながることを祈念する。

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